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神戸地方裁判所 昭和43年(む)200号 決定 1968年3月22日

被告人 李守萬

決  定 <被告人氏名略>

右の者に対する窃盗被告事件について昭和四三年三月九日神戸簡易裁判所裁判官大野官次がなした保釈許可の裁判に対し、弁護人中嶋徹から同月一二日準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一、本件準抗告の申立の趣旨ならびに理由は別紙準抗告申立書記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

本件被告事件の一件記録によれば、神戸簡易裁判所裁判官大野官次が昭和四三年三月九日申立人主張のように保釈保証金を二〇万円として保釈許可の裁判をなした事実は明白であるが、同月一一日中嶋徹が右保証金を納付し、同日被告人が釈放されたことも該記録により明らかである。

ところで、被告人の身柄の釈放により保釈許可の裁判はその執行を終了するが、保釈許可の裁判は保証金の納付の後でなければ執行することができないのであるから、保証金の納付は保釈許可の裁判についての被告人側の上訴権の放棄に相当するものと言うべく、身柄の釈放により被告人側の準抗告の申立権は消滅するものと解すベきである。

してみると、本件準抗告の申立のなされた同月一二日には、被告人側における準抗告の申立権は既に消滅しており、従つて、本件準抗告の申立は手続に違反した不適法なものと言わなければならない。

よつて、本件準抗告の申立は刑事訴訟法四三二条、四二六条一項前段によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 三木良雄 土井仁臣 孕石孟則)

準抗告申立書<省略>

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